翼の果てる場所
南から北へ飛んできたツバメは、北の国の空に魅せられた。
羽根を休めるツバメの美しさに魅せられた女王は、ツバメを城に招き入れた。
ツバメに金の籠と食べ物を与え、夜毎ツバメの語る異国の話に夢中になった。
女王の求めに応じて旅の話をしていると、次第にツバメは旅が恋しくなった。
また自由に空を飛びたい。ツバメは女王に籠から出してくれるように頼んだ。
女王は驚いてツバメに尋ねた。
「なぜ城から出たいのですか? あなたは幸せではないのですか?」
ツバメは答えた。
「私は籠の中では幸せになれません。
私は鳥です。鳥は空を飛ぶものです。
自分の翼で舞い、自分の歌を囀り、自分の旅を続けたいのです」
女王は悲しくなった。
「あなたは私の宝物です。あなたがいなくなれば寂しくなります。
あなたは私を忘れて、他の国へ行ってしまうのですか?」
ツバメは言った。
「女王様、私はあなたのものではありません。
私は自分のものです。私は自分の心に従って生きたいのです。
私はあなたを忘れませんし、春になれば思い出すでしょう」
女王は扉を開けて、ツバメを空に放った。
ツバメは女王に別れを告げて、空へと帰った。
名残り惜しむように、女王はツバメの姿が見えなくなるまで空を見つめた。
ツバメは北の城を離れて、南の国へ向かう。
南の国は暖かくて、空は晴れ、人々は笑顔だ。
ツバメは南の国が好きになった。
南の国の人々もまた、ツバメの歌を楽しみ、踊りに拍手を送った。
暖かくなったある日のこと、ツバメは北の国のことを懐かしく思った。
孤独で優しい女王のことを思い出したのだ。ツバメは女王に会いたくなった。
ツバメは南の街を離れて、北の国へ向かう。
北の国の女王の部屋の窓に止まり、歌を歌い、自らの存在を知らせた。
女王はツバメの声を聞いて、驚いて、喜んで、ツバメのもとへ駆け寄った。
それからというもの、ツバメは女王の窓辺で歌い、北の国と南の国を行き来した。
ツバメが歌を歌うと、人々は春が来たと喜び、ツバメの歌を楽しんだ。
冬が来て雪が降ると、南の国へ帰り、春になったら北の国へ戻る。
ツバメの行方は誰も知らない。
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